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2010年6月21日(月曜日)

201006 彩の国資源循環工場第鵺期事業 環境影響評価準備書 意見書(弥永氏)

カテゴリー: - kato @ 07時32分31秒

彩の国資源循環工場第鵺期事業に係る
環境影響評価準備書に対する意見

弥永健一

はじめに

   気候変動に伴う全地球規模の危機は現在及び将来の人類の生活を脅かし、生物多様性の重大な劣化をもたらしている。また、生物多様性の劣化は気候変動のさらなる悪化の要因となっている。本事業が生物多様性への負荷、温室効果ガス排出量の増加をもたらすことは明らかであり、周辺住民の生活への負荷をもたらすことも避けられない。環境への負荷の増大が明らかである事業について住民合意を得るためには、事業の必要性、公益性についての具体的かつ合理的な説明と、環境への負荷に重大かつ取り返しのつかないようなリスク要因が含まれないことが担保されることが必要である。
   本準備書には希少野生生物保護のためミティゲーションによる保護対策の推進を図る趣旨の文言が各所にある。しかし、ミティゲーションはまだ確立された手法とはいえない。野生生物の生態、エコシステムは複雑系であり、それについて科学的に未知の部分も多い。とりわけ絶滅危惧種については、その生息地撹乱・破壊により取り返しのつかない事態が引き起こされるおそれが大きい。全地球的危機の時代にこれ以上の種の絶滅を引き起こすリスクを伴う事業は厳に慎むべきである。
   以上の見地から本準備書について検討し意見を述べる。

1) 本事業実施区域及び周辺の自然環境(第3章)について
108〜111ページにあるように、本事業実施区域及び周辺は、ホンダ寄居新工場建設事業や彩の国資源循環工場など開発事業を含みながら、多くの生物種を擁する豊かな里山環境を残している。111ページによれば学術的に希少な保全すべき種として計73種があげられている。特記すべきこととして埼玉県レッドデータブック2008動物編で絶滅危惧鵺類の指定を受けているゲンジボタルが同地域を生息地としていることがあげられる。
一方、105ページにある表層地層図(図3.2−6)から見られるように、同区域および周辺には多数の断層が認められ、地盤災害のリスクを擁すると思われる。

2) 本事業による生態系破壊(第10章11)
第10章11生態系の節にある表10.11−11〜13から見られるように、本事業により計画地内の湿性低茎草地や周辺のコナラ群落等の約60〜100%が消失し、底生動物の主要な生息環境である水溜りや水路はほぼすべてが消滅する。これによりテン、フクロウ、イタチ、トウキョウサンショウウオ、モリアオガエル、ヤマアカガエル、サラサヤンマ、ホトケドジョウなどはおおはばに減少し、それに伴いカワセミなども減少する。計画地内のゲンジボタルの生息地も破壊されることが確実だと思われる。

3) 生態系破壊の回避・低減計画(第12章)
表12−1(19)に、「ゲンジボタルについては、生息数が少ないことも勘案して、工事期間中に幼虫が確認された場合には環境整備センター内に整備したホタル用のビオトープに幼虫を移植することで、地域における個体群の保全は可能であると判断した。
また、その他の保全すべき動物種についても、樹林環境の残置、ビオトープにおける樹林地と湿地が一体となった環境の創出といった、谷戸の自然環境の保全あるいは創出を行うこととしている。」などと書かれている。
2)にあるように、本事業により計画地内のコナラ群落などの約60%以上が消滅し、水溜りや水路はほぼすべてが失われることが想定されているが、これはエコシステムに対する重大な破壊である。ビオトープの創出等について書かれているが、その具体的面積、位置、構造等についての記述はない。「地域における個体群の保全は可能であると判断した。」というが、これはまったく具体性・科学性を欠く「独りよがり」というしかない。とりわけ、絶滅危惧種であるゲンジボタルが計画地及び周辺から姿を消すおそれは否定できず、これは生物多様性に対する重大かつ取り返しのつかない破壊行為となり得る。

4) 埋立地からの浸出水(490ページ)
490ページに「埋立地からの浸出水については、自己修復機能を有する5層の遮水シートを敷設することにより、浸出水が地下に浸透することを防ぎ、漏水検知システムを設置し、万が一漏水があった場合にも速やかに対処できるようにする。」などと書かれている。遮水シートが破損することがあることは、各所での事例からも知られている。自己修復機能が具体的にどのようなものかは、ここには一切書かれていない。また、「万が一」以下の文章は、「自己修復機能」も不十分になる場合があり得ること想定する考え方に基づくものと捉えられるが、「漏水検知システム」が作動したとして、「速やかな対処」とはいかなるものか、これについても具体的な叙述がない。
ここで、明らかにされるべきことは、漏水が発生した場合に、具体的にどのようなリスクがあり得るのか、漏水に混入する有害物質には何があり得て、それによる被害はどのようなものになり得るのかということである。また、その場合にとることができる対策、被害弁済、責任のとりかたについての明記が必要である。

5) 工場・施設の稼働に伴う周辺被害(第7章)
工業団地では製造業、再資源化施設及び研究施設の立地が予定されているが、それらの具体的内容は未定である。しかし、溶剤の使用等に伴う炭化水素等の排出が予想され、想定される事業と同種の事業に関する実例から、排出量の予測が行われ、それによって被害などの評価がされている。予測には、例えば表10.1−109に一般機械器具製造業から敷地面積当たりに排出されるトチクロロエチレンは30kg/1000m^3/yearであるなどとされている。しかし、予測値には当然はばがあり、誤差もあるので、このように確定的な数値をあげることには問題がある。したがって、この予測値なるものに基づく被害評価も「いい加減なもの」としか言いようがない。
491ページには「工業団地からの排水については、すべて公共下水道に放流し、公共用水域には排水しない」などとの記述がある。問題は、どこに放流されるかよりも、排水中に含まれる有害物質等として何があるか、またそれによる被害の可能性と、その対策である。工場、施設の具体性がないなかで、「工業団地の各立地企業に対して大気汚染防止法及び埼玉県生活環境保全条例に定める規制基準を順守させる」などと書かれ、「従って工場・施設稼働に伴う周辺環境への影響は少ないものと考える」等の記述が繰り返されている。立地工場・施設が選定されるに先んじて、それら事業の具体的内容を明らかにさせ、それに係る周辺環境影響につき客観的評価を行い、その結果を公開して関係住民による合意を得ることが担保されなければ、「工場・施設稼働による周辺環境への影響は少ないものと考える」との記述は無責任きわまる「空約束」としか見なされない。
上に述べたように、計画地周辺での地盤災害のおそれもあることから、工場・施設からの排水のみならず、これらが災害により破壊された場合のことについても予測・評価することが必要である。

6) 温室効果ガス排出(678〜681ページ)
680ページに「本事業では、土地の造成に伴う樹木の伐採により、樹木等による二酸化炭素吸収量は870t-CO2/年減少するが、改変後に樹木の植栽を行うことにより二酸化炭素吸収量を97t-CO2/年増加させ、二酸化炭素吸収量の減少分を最小限にする計画である。以上のことから、土地の造成(樹木の伐採)に伴う温室効果ガスの影響は、事業者としてできる限り低減されていると考える。」との記述がある。この記述が正確ならば、土地造成に伴う二酸化炭素吸収量減少は870-97=773(t-CO2/year)になる。これで「できる限り低減されている」とは驚くべき記述である。また、土地造成は大量の土工量を伴い、土中に貯留されている大量の二酸化炭素の放出を伴う。また、造成による生態系破壊も二酸化炭素吸収能力の低下を伴うが、これらについての評価はなされていない。
工場・施設の稼働に伴う二酸化炭素排出についても、それら施設等が具体化しないことには評価も「いい加減」なものにしかなりえない。また、工場・施設への通勤自家用車等から排出される二酸化炭素量についても評価がされていない。

おわりに
  
   現在、環境整備センターでは埋め立て予定地の4,8,11,12号地が手つかずのまま残っていることが地元NGOからも指摘されている。本事業の必要性として第2章(4ページ)に書かれていることは具体性に欠け説得性がない。仮に将来、埋め立てなどが必要になるとしても、本事業計画地は自然環境にも優れ、絶滅危惧種の生息地をも含むことから、このような事業を行うことは避けるべき場所である。
   本環境影響評価準備書は、上記したように事業内容について具体性を欠き、環境影響対策についても「ビオトープ、ミティゲーション」等の用語を無内容のまま書き連ねることで事足れりとする姿勢が目立つ。これは住民をあまりにも軽視するものであり、環境影響評価準備書の名に恥じるものと言わざるを得ない。このままでは埼玉県の環境行政についての信用は失われる。以上述べた諸点を含む問題につき再評価を行い、環境影響評価準備書を再提出することが必要である。


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活動目的と活動内容
<活動目的> 彩の国資源循環工場についての活動を通じて、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会の仕組みを見直し、地球にやさしい本来の資源循環型社会を目指します。 <主な活動内容> ・松葉によるダイオキシン類・重金属類調査と報告会 ・桜(ソメイヨシノ)異常花発生率調査[桜調査ネットワーク] ・小川町、寄居町の小中学校健康保険調書による疫学的調査 ・アサガオによる光化学スモッグ調査[埼玉県環境科学国際センター] ・埼玉県へ意見書・要望書・公開質問状 提出 などなど…ぜひ、あなたの力をお貸しください。 いっしょに活動する「正会員」、イベント情報受け取れる「賛助会員」があります。

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