2007.6.30 ホンダ公聴会 彩の国資源循環工場に関連した意見
寄居町西ノ入五ノ坪の加藤と申します。わたしは「彩の国資源循環工場と環境を考えるひろば」として、この産業廃棄物中間処理施設について、これらの環境影響や住民の健康保全の活動しています。また、今年度の寄居町環境審議会委員をさせていただいています。このような立場から見えてきたことを、埼玉県行政に活かしていただくため、公述します。
世界のホンダがこの寄居町に来るということで、寄居町を挙げて歓迎しています。
今までこれといった地場産業もなく、誇れるのは豊かな自然環境。特に、日本人の心に描く「里山」、ふる里と言って想像する、平らな土地に田園が広がり、背景には小さな山が連なり、きれいな川が流れている、そんな光景は埼玉県の中でも意外と少なく、寄居町はそんな日本人の理想郷の一つに成りうる町であると自負しております。
本来ならば、このような自然環境を活かした農業をからめた観光などで町起こしをすべきところですが、現在寄居町はゴミで主な生計を立てています。三ヶ山にある、県立の廃棄物埋立て最終処分場、そして同じ敷地内に、日本一の規模といわれる9社からなる大型複合産業廃棄物中間処理施設群。これらは周辺環境、住民、特に将来をになう子ども達の健康を損ねる可能性があり、大変なリスクを背負っています。
自分達の大切な将来を担う子ども達の健康と環境を切り売りしてゴミに変えお金を得るという、まさにおもらい根性で来ていました。
そこにホンダという、日本有数の優良企業が来るのです。これを機会に、寄居町は今までの方針を変えて、ゴミに頼らない町作りをしていくべきただと心から願います。
ホンダは、その工場造成についても環境にも大変有効な手法をとられているとのことです。熊本製作所では工場周辺の広大な154,000m2もの植林を地元の木をドングリから育て、“ふるさとの森”を創り、その中にすっぽり工場が包まれているという環境です。そこにはキツネ・たぬき・イタチや野鳥類など多くの動植物が生息しています。地元からは飲料水のみ地下水から頼り、工業用水や雑用水は雨水をためる調節池からまかなうそうです。工場排水は浄化してまた使うので、排水自体がありません。したがって、おとなり「彩の国資源循環工場」のように鉛やダイオキシン流出もありえないのです。しかし、ここ寄居に来るやり方は、本来のホンダらしくなく、熊本にくらべ寄居町は大切にされていないと感じました。
(以前ゴルフ場開発のために買っておいたが、バブルが弾け、使えなくなった土地です。何か断わりきれない腐れ縁でもあるのでしょうか?)
地球温暖化で今や貴重な森林しかも山一つをつぶして、工場を造るなど、とんでもありません。他に代替地を探すべきです。
これに対し、前回の説明会では、ア)他の土地買収の難しさにくらべ森林は簡単であること。イ)高速道路のインターチェンジからの近さなどが事業者から回答がありました。イ)については、石油の高騰で今やトラックは普通の国道を利用しています。ホンダ予定地のとなりの「彩の国資源循環工場」に搬入出されるトラック類など国道で多く見られます。
ア)については、事業者の都合であって、環境アセスメント=環境保全を行うべき埼玉県の立場からは何の理由にもなりません。なぜなら
1)その理由としてまず温暖化対策としての森林の有効性です。
森林は、温室効果ガスである二酸化炭素を吸収し、酸素を提供しています。
なかでも日本の森林土壌の炭素の貯蓄能力は世界平均のおよそ2倍と言われています。
現在、世界の森林は、1分につきおよそ30ヘクタールずつ失われているといわれており、年間では約14万平方キロ。北海道と九州を併せたくらいの面積の森が、毎年無くなっているということになります。世界で森林が減少している今、世界的にも貴重な日本の森林は増やすべきであって、これ以上減らしてはならないのです。
2)また、木の葉には周辺の温度を下げる効果があります。葉から水分が蒸発する時に熱を奪うのです。これなどは直接的に温暖化対策になります。
3)葉の呼吸によって、CO2以外にも硫黄酸化物や光化学スモッグの原因物質でもあるオキシダントや大気汚染物質も吸収し、分解し、周辺大気環境を良くする働きがあります。
4)山の森林は、単に“緑”という訳ではなく、土壌中の微生物〜植物〜大型動物まで含む、たくさんの命を育んでいる生態系が構築されているのです。
5)日本では1983年〜1998年の間、森林面積は減少し続けており(約2%)、この間、埼玉県では日本一、森林が分断化されています。その原因は、開発による土地の造成、ゴルフ場開発、宅地造成、工場や道路の建設、それから森林伐採です。このように分断されると、表面的には同じ森林でも、中身=物多様性が失われてしまっている、環境的に質の悪い森林となってしまうのです。これが埼玉県の森林の現状です。
6)一度、破壊されてしまった生態系を元にもどすには、膨大な年数がかかるので、今ある生態系は保存すべきです。例えば、普通に見られる“表土”と呼ばれる土壌は、それが1cmの深さが出来るまで100年〜400年もの長い時間がかかります。
7)広瀬立成氏も物理学者の立場から今や地球全体として、人類による自然の利用(破壊)が行き過ぎ、地球の許容範囲を超えてしまい、マイナスの影響が数々の現象として表面化しており、このまま同じような開発行為を進めていけば、人類を含めて生存の危機に陥るのは必定と警告しています。
8)このホンダの予定地は、埼玉県として、秩父の山々〜比企丘陵までの“緑の回廊=エコロジー・ネットワーク”といわれる、野生動物の移動可能な地帯です。本来なら細かく分断されたこの“緑の回廊”をつなげ、生態系を保全し、里山を守ることで多様な動植物と人間との共存を図るよう考えるのが埼玉県としての環境保護なのです。
今一度この視点に立ち返り、環境アセスメントを本来のアセスのできる機関と共に進めるべきです。
人間による開発行為を他の動植物は止めることはできません。しかも、人間の過度の開発行為による自然破壊で生態系が崩れると、森林にいられなくなった野生動物が里に降りて田畑を荒らす、水不足、地球温暖化など結局は人間に帰ってくるのです。だからこそ人間は適正な環境影響評価をして、人間以外の生命をできるだけ守り、絶滅危惧種をこれ以上増やさないよう努力をすべきなのです。
しかし、埼玉県による環境影響評価にはそれがありません。環境影響評価をした機関が適当でなかったと思われます。適正な専門家を招聘して再度環境影響評価をしなおすべきです。
埼玉県の環境影響評価にはかなりずさんなものがいくつかあります。このホンダの国道254号線をはさんで向いにある「彩の国資源循環工場」についてもそうでした。このときは日建設計でしたが、環境を保全するというより、事業をすることを前提としていました。
現在、「彩の国資源循環工場」についてこの環境アセスに基づき、ダイオキシンなどの大気測定がされていますが、立地地点はともかく、フェンスや生け垣、さらには山自体で空気の流れを遮られてしまうような条件のもとでなされています。これでは正確な大気測定ができません。専門家の方も現地を見て、おどろかれていました。
また、さらにひどいのが“戦略アセス”でされた「彩の国資源循環工場第2期事業」でした。これに先立った所沢の事業については、やらないことも含めて比較検討されていたのに、「彩の国〜」に至っては予定された敷地内でプランを3つ挙げるという、非常に幼稚なものでこれにもアセスを専門とする学者もあきれていました。1999年に改正された環境影響評価法において最も基本となるミディケーションの原則が抜け落ちていたのです。
本来の環境アセスメントは、まず1番に“回避”=予定された土地とは別の事業の代替地があるかどうかまず検討する。それがない場合、第2に“低減”=予定された土地の改変をできるだけ小さくする。それでも改変により影響を受けるところは、第3に“代償”=まったく別の土地に、この事業により失われてしまう環境と同等の代償を用意する。この原則をあいまいにし、無視してしまう環境アセスが、ここ最近だけで3つ立て続けに行われることでこの三ヶ山〜金勝山周辺の、ひいては日本の生物多様性の豊かさは、非常な勢いで失われ、次世代に重いツケを回すことになるのです。
いまだに、たとえ希少種が見つかっても、それを移植すればいい、というのは旧態然としたいわゆる“閣議アセスメント”のときの話ですが、これがここでは「彩の国〜」から続けられています。本来なら、守るべきその希少種を含めた環境そのものを保全すべきところです。そうでなくては何のための環境アセスかわかりません。本来生きていた場所から切り離された野生動物が動物園にいるように「オオサンショウウオの里」とかつくっても、それでは飼い殺しです。環境保全からはほど遠い、陳腐なものとなってしまっています。
また、希少種だけを保全すればいいというのも過去の“閣議アセスメント”の話で、ここのように里地里山にいままで普通に見られていた動植物に絶滅危惧の恐れがせまっており、生物多様性そのもの、里山まるごと保全する必要があるのが、日本の現状なのです。
このあたりに住んでいると、開発を気軽に考えがちですが、埼玉県全体をみると今や大変貴重で守るべき自然環境なのです。埼玉県担当課職員は特に肝に命じて、しっかり取組んでいただきたいものです。あなたたちの行いで、将来の埼玉県の自然環境の行方が決るのです。多くの動植物の命と次世代、次次世代の埼玉県民の命がかかっているのです。
再度いいますが、埼玉県は環境影響評価をする機関の選択を間違えました。適正な専門家を招聘して再度環境影響評価をしなおしてください。
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