東京新聞では、2010年8月18日に一面トップ記事で、リサイクル“再生砕石”にアスベストが混入していることについて報じ、日々、話題を提供しています。
ここ彩の国資源循環工場でも、建設廃棄物リサイクル施設「埼玉環境テック株式会社」があります。ここは大丈夫なの??埼玉県さん。
『再生砕石にアスベスト 駐車場 工事現場で利用』 2010年8月18日
建物を解体したコンクリート塊などを再利用した砂利「再生砕石」に、人体に有害なアスベスト(石綿)を含む建築資材が混入しているケースが多数あることが、市民グループが、東京、埼玉、神奈川の一都二県の約百三十カ所で行った調査で分かった。解体された建築資材の分別や処理が不十分だったためとみられる。再生砕石は、駐車場や工事現場で広く使われており、全国でアスベストが身近な場所で野ざらしになっている可能性がある。
「全国で野ざらしか」
確認できたアスベストを含む建材の多くは、工場屋根などに使われるスレート材。調査した「浦和青年の家跡地利用を考える会」(さいたま市)の斎藤紀代美代表は「形を変えたアスベストが身近にあることに驚いた。全国的な実態や健康への影響を、行政が早急に調査すべきだ」と話す。
さいたま市の県施設跡地の再生砕石から昨年八月にスレート片が見つかったのをきっかけに、同会は今年五月以降、さいたま市内約百十カ所、東京都荒川区や杉並区、川崎市川崎区などの約二十カ所の計約百三十カ所を調査。駐車場や道路建設用地の再生砕石から、スレート材などの破片を採取した。
このうち約四十カ所のサンプルを、特定非営利活動法人(NPO法人)東京労働安全衛生センターに分析を依頼したところ、すべてからアスベストの一種であるクリソタイル(白石綿)や、疾病リスクがより強いとされるクロシドライト(青石綿)が見つかった。
環境省によると、アスベストの再生砕石への混入は過去に和歌山県橋本市でも確認されている。二〇〇八年十月、工場解体で出たスレート材処理施設に運び込まれ、再生砕石に混入していたことが、県の調査で判明した。
分析した東京労働安全衛生センターの作業環境測定士、外山尚紀さんは「未分析のサンプルも、形状からアスベストが含まれている可能性が極めて高い。混入が特定の自治体だけで起きるとは考えづらく、全国的に同じ状況ではないか」とみている。
建設リサイクル法を所管する国土交通省は「ほかでも混入している可能性は否定しないが、実態は不明」。環境省は「スレート片からの飛散状況の測定データもなく、健康リスクは判断できない」としている。
「実態把握が急務」アスベスト測定や生体への影響に詳しい東洋大の神山宣彦教授(鉱物学)の話
アスベストがリサイクル製品に混ざって再び表に出ているとすれば、見過ごせない問題だ。
アスベスト測定や人体への影響に詳しい東洋大の神山宣彦教授(鉱物学)は「見過ごせない問題だ。スレート板など非飛散性とされる建材でも、破砕して屋外で風雨にさらされれば飛散することは考えられる。子どもがおもちゃにしたり、吹きつけアスベストが付着したままのコンクリートが紛れていないかも気になる」と指摘する。
健康への影響について「データがなく判断できないが、処理施設で知らずに破砕しているとすれば、作業者が有る程度の高濃度で吸い込んでいる可能性もある。まずは実態把握が必要」とする。
「発症まで10年以上 健康リスク不詳」
再生砕石に混入したアスベストの飛散をめぐる環境測定データはない。健康リスクについて専門家は「現状では『ゼロではない』としか言いようはなく、早めの実態把握が必要」と口をそろえる。
中央環境審議会の石綿健康被害判定小委員会委員長を務めた森永謙二医師によると、石綿セメントの風化でアスベストが飛散することは、一九七九年と八二年に海外の研究報告がある。濃度は極めて低く、中皮腫の発症リスクも極めて小さかったという。
森長氏は「これを基に考えると、吸い込む暴露の可能性はゼロではないとしても、発症リスクは無視できるのではないか」とみる。
一方、アスベストの健康被害は発症まで10年以上かかるため、原因や追跡調査が難しいとの懸念もある。大手機械メーカー、クボタの旧神崎工場(兵庫県尼崎市)周辺で住民の健康被害を調べた奈良県立大の車谷典男教授は「操業当時の環境データがなく、飛散濃度は想定するしかなかった」と振り返りつつ、「将来、再生砕石で健康被害が出ても原因は特定できないだろう。早めにリスクの有無を住民に知らせるべきだ」と警鐘を鳴らす。
アスベストの暴露を示す病変に、肺を覆う胸膜が部分的に厚くなる「胸膜プラーク」がある。良性の病変で、低濃度のアスベストを吸っても発症する。周辺住民にこの症状があれば暴露が疑われるが、プラーク出現は暴露から十五〜三十年後。再生砕石が本格的に使用されたのは二〇〇〇年の建築リサイクル法施行後で、神奈川県の横須賀市立うわまち病院の三浦 太郎副委員長は「まだプラークが出る段階ではない」と話している。
<再生砕石> コンクリートやアスファルト廃材を破砕し、表面処理を施すなどして2〜4センチ程度の破片にしたリサイクル砂利。道路の路盤材や地下配管保護のクッション用、建設用地の水はけ促進などに使われる。駐車場に敷かれることも多い。価格は、一般の砂利の6割程度と安い。
<スレート材> アスベストとセメントを原料に波板や平板に固めた建築資材。工場や住宅の屋根に使われるスレート瓦、外壁や、間仕切りなどの内装材に使われた。アスベスト含有量は5〜20%程度。1930年代から製造され、2004年に製造、出荷とも禁止された。(東京新聞)
『身近に転がる有害物質 再生砕石にアスベスト』 2010年8月18日
「解体の分別不十分 行政チェックにも限界」
アスベストが形を変えて地度かな場所で野ざらしになっていた。コンクリートなどの建築廃材が再生砕石にリサイクルされる過程で、アスベストはどうやって紛れ込んだのか。過去に混入が判明した和歌山県橋本市の事例では、建物解体時の分別の不十分さが原因と判明。行政チェックが追いつかない実態も浮かび上がっている。
県によると、二〇〇八年十月、同市の工場解体現場で、スレート材などが分別されていないのに住民が気づいた。廃材の搬入先の鹿島道路(東京都)の処理施設で、他の現場から出た廃材と合わせて既に再生砕石に処理されていた。中には出荷済みのものもあった。県が回収した再生砕石九トンを分析した結果、アスベストを含むスレート片が検出された。
アスベスト混入には本来、二重三重に規制の網が掛かる。建設リサイクル法は。建物解体の事前届け出や建材の分別を義務付け。アスベストを含む建材があれば、大気汚染防止法や労働安全衛生法で飛散防止措置が必要だ。また廃棄物処理法に基づく許可業者以外は、アスベストの受け入れや処理ができない。
しかし、解体業者は県に「スレートにアスベストが含まれているとは知らなかった」と説明。鹿島道路による当時の廃材のチェックも、トラックの計量時に荷台を事務所の二階から目で確認するだけだった。
全国解体工事事業団体連絡会の出野政雄事務局長は「細かいスレート片などが混じることはあり得る」と実情を明かす。
一方、自治体も立ち入りやパトロールなどでチェックをしている。さいたま市の県施設跡地の再生砕石から昨年八月にスレート片が見つかり、埼玉県は、解体現場や処理施設の立ち入りで、アスベスト建材の有無や分別状況、再生砕石への混入の確認を強化した。しかし、昨年度に同県内で届け出があった解体工事約八千五百件に対し、立ち入りができたのは約千二十件。「すべての立ち入りは無理。作業をずっと監視するわけにもいかない」(県産業廃棄物指導課)。
不十分な分別と、チェックの限界。加えて、製品としての再生砕石には品質管理の規制もない。アスベストが混入する“隙”は多い。
「わずか30分で次々発見」
市民団体「浦和青年の家跡地利用を考える会」がことし七、八月にさいたま市内で行った再生砕石の調査に、本紙記者も同行した。
「市民団体調査に記者同行」
中央区役所の隣を流れる鴻沼川。川沿いの測道に、再生砕石が敷かれている。齋藤紀代美代表から、スレート片を見分けるポイントは、厚さ五〜九ミリの平板や波板、表面に編目や凹凸がある、肉眼でも繊維状の物質が見えるーと教わった。
歩きながら探し始めると間もなく、「ありました」と齋藤さん。長さ二〜三センチ、薄い灰色がかった破片。石ころというより、板の一部のよう。表面に白っぽい繊維状の物質が見えた。アスベストの一種、クリソタイルを含んだスレート片とみられるという。
砂利の上にしゃがみ込み、似た物体を探す。再生砕石なのに瓦や陶器、ガラスなど異物も多い。それらしい破片が目に留まり、齋藤さんに見せると「これはアスベストが入っていそうですね」。
素手で触ると意外にもろく、角が崩れる。ここでは約30分間に、記者は五個のスレート片を発見した。
側道脇には子育て支援センターがある。「子どもたちが触っていなければいいが」と心配になった。
さいたま新都心の公有地でも、再生砕石の中にスレート片があった。大宮区内の道路建設用地では、配管の接合部に使うパッキンのような破片を発見、表面に白い繊維が目立っていた。
記者が見つけた計十個ほどの破片は後日、東京労働安全衛生センターに持ち込んだ。すべてからアスベストを確認し、特にパッキンとみられる破片は「アスベストが主成分で、含有率は80〜90%」と説明され、あらためて驚いた。(加賀大介)
『アスベスト混入 リサイクル以外でも』 2010年8月20日 朝刊
川崎市川崎区の住宅地にある駐車場で、アスベスト(石綿)を原料とした建築資材のスレート材の破片が砂利に混じって大量に放置されている。建物解体で出たがれき類を再利用する「再生砕石」にスレート片が混入する問題が明らかになっているが、この駐車場の破片は業者が建物解体で扱った廃材をそのまま捨てたらしい。リサイクル過程以外でもスレート片は身近な場所に流出しているようだ。 (川崎支局・北条香子)
同区小田のJR南武線沿いの住宅地。車五台分の駐車場に大小さまざまなスレート片が混ざった砂利が敷かれている。砂利の大半がスレート片という場所も。大きいものは十センチ四方近くもあり、二〜四センチの再生砕石に混入する破片と比べると二倍以上だ。
発見した近くに住む建築士渡辺治さん(50)が採取したサンプルをNPO法人「東京労働安全衛生センター」に分析してもらったところ、アスベストの一種のクリソタイル(白石綿)が検出された。
渡辺さんは「車のタイヤがスレート片を細かく砕き、舞い上がった粉じんを近所の住民が吸い込む可能性がある」と警戒する。
近所の人の話では、地元の屋根工事業の男性(故人)が二十数年前からスレート材を砕いて駐車場に捨てていたという。男性の妻(78)は本紙の取材に「主人は長年、工場の屋根の設置や解体をしていた。駐車場にスレート材を置いていたが、アスベストが騒がれだし、十年ほど前に処理した。その一部が残っているかもしれない」と話した。
環境省によると、二十年前とすればスレート材は一般の産業廃棄物と同じ扱いで、小規模なら処理の届け出などは不要だった可能性があるという。担当者は「今後処理する場合は現在の法規制が適用される」とした。渡辺さんは「この地域はかつては工業地帯で屋根などにスレート材を使った工場が多かった。同じような経緯で、ほかでもスレート材の破片が野ざらしになっていないだろうか」と心配する。
川崎市は「現地を確認し、対応を検討する」としている。
『栃木県 アスベスト混入防止徹底を通知』 2010年8月20日 朝刊
アスベスト建材の破片が再生砕石に混入している問題は、対策に動きだす自治体が現れた。まずは行政として業者に混入防止を求める通知を出す手段がとられるが、アスベスト建材の破片が各地に散乱している状況が見つかれば、業者への立ち入り調査や、砕石使用場所の実態調査も迫られそうだ。
本紙の報道を受け、栃木県は十九日、再生砕石の製造に携わる県内の八十七業者に対し、混入防止を徹底するよう通知した。
県廃棄物対策課は「解体現場での分別が不十分であれば、リサイクルの過程で混入する恐れは否定できない。処理施設にアスベスト建材が搬入されないよう、事業者には管理体制を強化してほしい」としている。
昨年八月に埼玉県施設跡地の再生砕石からアスベストを含むスレート片が見つかったさいたま市は今年六月、市内十五の砕石処理業者に混入防止を促す通知を文書で出した。
文書は「再生砕石にかかる石綿含有建材の混入防止について」と題し、許可がなければアスベスト含有建材の受け入れ、処理ができないことを説明。解体現場などから廃材が搬入される際、スレート材など異物混入チェックを十分行い、混入している場合は受け入れ拒否するよう求めた。
二〜三月には処理施設への臨時の立ち入り検査も実施した。本年度も既に立ち入りを行ったが、スレート材などの混入は見当たらなかったという。
『アスベスト混入 都、業者立ち入りへ』 2010年8月21日 朝刊
建物解体で出たがれき類を再利用した砂利「再生砕石」にアスベスト(石綿)建材の破片が混入している問題で、東京都の石原慎太郎知事は二十日の記者会見で「けしからんことだ。アスベストがあるかないかを厳密に調べて、処理しないといけない」と述べ、都内の砕石処理業者の立ち入り調査を実施する考えを示した。
都によると、都が砕石処理を許可している業者八十八社のうち、一部を抽出して処理状況を調べる。「アスベストは産業廃棄物として分別されている、というのが前提だった」(都環境局)ため、混入をめぐる調査は初めて。市民団体の実態調査では都内でも混入事例が判明している。
都は七月、東京建設業協会など七つの業界団体に文書で混入防止を徹底するよう求めた。石原知事は「粗忽(そこつ)というかずさんというか、あってはならないこと。一つの大きな反省の素材だと思う」と語った。
『市担当者ら状況確認 川崎区 アスベスト放置現場』 2010年8月21日
アスベスト(石綿)を含む建築資材のスレート材の破片が、川崎市川崎区小田の駐車場に大量に放置されている問題で、市の担当者らが二十日、現場の状況を確認した。
スレート片は地元の屋根工事業の男性(故人)が約二十年前、捨てたものとみられている。この日は関係する環境対策課、廃棄物指導課、公害研究所の職員計五人と、土地を所有する東京電力の関連会社の社員二人が現場を訪れ、砂利に混じって敷かれているスレート片の写真を撮るなどした。
市によると、これまで近所の住民からの通報などはなかったという。市は今後の対応を検討している。 (北条香子)
『アスベスト混入 国が対応策協議 官房長官』 2010年8月24日
政府は再生砕石にアスベスト建材の破片が混入している問題で、実態把握を急ぐとともに、危険性の除去に向け対応策づくりに乗り出した。仙谷由人官房長官が二十三日の記者会見で明らかにした。
全国でアスベストが野ざらしになっているとみられる現状を深刻にとらえ、不安を解消するため、遅まきながら動きだした格好だ。
仙谷氏は「今、環境省と国土交通省、厚生労働省の関係省庁で対応の協議を始めている」と強調。「そこでの整理がある程度行われた段階で詳しい報告を受けたい」と述べ、関係省庁による具体案を聴取した上で、最終的な対応策を取りまとめる意向を示した。
『アスベスト混入 川崎市、業者立ち入り』 2010年8月24日
建物解体で出たがれきを再利用した砂利「再生砕石」に有害なアスベスト(石綿)を含む建築資材であるスレート材の破片が混入していたことを受け、川崎市は二十三日、市内の砕石処理業者十六社への立ち入り調査を始めた。東京都も都内の処理業者を立ち入り調査する方針を決めている。
川崎市内では、市民団体が川崎区内の更地などで行った再生砕石の実態調査で、アスベストの混入が判明し、本紙が今月十八日に報道した。市は週内をめどに、処理工場に搬入されたがれき類や処理された再生砕石について、混入の有無を目視で調査する。各業者にはアスベスト含有資材の混入を防ぐため、がれき類の受け入れ時の確認を徹底するよう求める。
川崎市はまた、川崎区小田の駐車場にアスベストを含むスレート材の破片が大量に放置されていた問題で、破片を捨てたとみられる地元の屋根工事業の男性(故人)の遺族と接触した。時期は未定だが、遺族側が破片を撤去することになったという。 (東京新聞)
『薬害エイズ 教訓生かせ 川田龍平議員に聞く』 2010年8月24日
アスベスト(石綿)建材の破片が「再生砕石」に混入している問題は、薬害エイズの被害者の川田龍平議員(みんなの党)が、今年三月の参院環境委員会で取り上げていた。川田さんは本紙のインタビューに応じ、「国は早急に実態を把握し、対策を考えるべきだ」と指摘し、「不作為が生じれば、薬害の教訓は生かされないことになる」と語った。 (聞き手=加賀大介)
−国会質問で取り上げたきっかけは。
以前から石綿健康被害救済法や、建設労働者のアスベスト被害問題に取り組んできた。昨年八月にさいたま市で再生砕石への混入があり、地元の市民団体から話を聴いた。二〇〇八年には和歌山県でも同様の事例があったと知り、これは全国に広がっている問題だと感じた。
−国側の認識、対応状況はどうか。
質問が出て、ようやく事態を把握したという印象。対策については国土交通省が建設リサイクル法による届け出の様式を変え、解体廃材への付着物を書かせるようにしたが、アスベストと明記しておらず、実効性はない。東京新聞の報道直後、環境省、国交省、厚生労働省は会合を開いたようだが「現状で問題点があるか調査し、必要な問題があれば、必要に応じて対応すべく検討する」との内容。つまり何も決まっていないということだ。
−国は〇八年に建設リサイクル制度のあり方を話し合う審議会などの指摘で混入の可能性を認識していた。
それが現実に起きても認めようとしないのは、まさしく官僚的な事なかれ主義。その間にも再生砕石は大量に使われ、アスベストを含む建築資材のスレート片がどれだけ混入したことか。解体現場で分別徹底が守られていないと、想像すらしなかったとすれば、認識が甘すぎるとしか言いようがない。
−必要な対策は。
実態調査をすぐにやるべきだ。スレート片がどこに、どれだけあるのか。住民が調査を希望する場所や、多く混入している場所だけでもいい。スレート片が風化すればアスベストが飛散する。法規制やチェック体制にも抜け穴がある。罰則を強化するなど国は対応を考える責任がある。官僚側でできないのなら、政治主導でやるしかない。
−薬害エイズ問題との共通点は。
アスベスト問題は世界的にはかなり以前から認識され、取り組まれている。日本は対応が遅れている。その点は薬害エイズと同じ。水俣病問題もそうだが、長い時間たってから被害が出る問題への取り組みは、日本は遅い。アスベストも現在分かっていることを基に、未然防止の立場から対応するべきだ。不作為が生じれば、水俣や薬害エイズの教訓が何も生かされないことになる。
『石綿入り破片「見つからず」 実物知らぬ職員が調査』 2010年8月26日
建物解体後のがれき類を再利用した「再生砕石」に有害なアスベスト(石綿)含有建材のスレート材などの破片が混入している問題で、本紙の報道や市民団体の指摘で混入が見つかったさいたま市内の公有地の調査に、埼玉県が砕石に混じっていたスレート片を見たことがない職員を派遣していたことが分かった。結果的に調査でスレート片は発見されず、市民団体からは「なぜ立ち会いを求めないのか」と疑問が出ている。 (社会部・加賀大介)
県は十八日、本紙記者と市民団体「浦和青年の家跡地利用を考える会」(斎藤紀代美代表)がスレート片を発見したさいたま新都心の公有地に、職員を派遣。その際は発見できず、二十一日も小板橋通泰・産業廃棄物指導課長ら四人が訪れて二時間がかりで再生砕石に混じった塩化ビニール管やプラスチック、陶器片などの異物約七十個を持ち帰ったが、やはりスレート片は含まれていなかった。
四人は事前に県職員の教育用に使う十五センチ四方ほどのスレート材のサンプルを見ていたという。小板橋課長は「砕石に混入した状態のスレート片の実物は見たことがなかった。結果的に見つけられなかった」と話した。
これに対し、斎藤代表は「野ざらしの破片は汚れていたり、モルタルに似て見えたりする。実物を知らない人だけで探しても難しいだろう」と指摘する。記者は二十五日に現場を訪れ、スレート片を見つけた。
上田清司知事は二十三日の定例記者会見で県による調査について「チェックしたがなかった」と発言。本紙記者の「(スレート片が)分かる人が調べたのか」との質問にも「もちろん。廃棄物指導課長ですから」と答えた。
一方、さいたま市も六月ごろ、考える会がスレート片を見つけたと指摘した大宮区、浦和区など市内五カ所の再生砕石を調べたが、やはり発見できなかった。市は、会が求めた調査への立ち会いを拒否していた。
しかし、本紙記者が七月に同じ場所を調べたところ、四カ所で複数のスレート片を確認した。
市環境対策課は「怪しい物があれば、割って断面を調べるなどしたが、見つけられなかった。立ち会いの希望は担当部署に伝えたが、必要ないと判断された」としている。 (東京新聞)
『川崎市、全解体現場立ち入り アスベスト問題に対応』 2010年8月26日 朝刊
有害なアスベスト(石綿)を含む建築資材のスレート材の破片が、がれき類を再利用した「再生砕石」に混入している問題で、川崎市は二十五日、アスベストを含む建材を解体するすべての現場に立ち入り調査するなどの対応策を取ったと発表した。
建設リサイクル法で、床面積八十平方メートル以上の建物の解体工事は事前届け出や建材の分別が義務付けられている。
市によると、これまで解体工事現場のパトロールは無作為抽出で行っていたがアスベストを含む建材の届け出がある解体現場には原則的にすべて立ち入り調査することにした。
市は既に十九〜二十五日、解体現場七件を調査し、いずれも問題はなかったという。市内では二〇〇九年度、アスベストを含む建材がある建物の解体工事は計二百一件が届け出られていた。同市川崎区小田の駐車場に、アスベストを含むスレート材の破片が大量放置されていた問題については、二十四〜二十六日に現場付近で空気のサンプルを採取。約一週間後に大気環境測定の結果が出るという。
◆県も調査開始
神奈川県は二十五日、砕石処理業者などへの立ち入り調査を始めた。松沢成文知事が定例記者会見で明らかにした。
調査対象は三政令市と横須賀市を除く二十九市町村の四十六社。この日は厚木市と愛川町の二社で、がれき類などにアスベストが混入していないか調査。搬入時にアスベスト混入の有無を徹底して確認するよう求めた。今後、七月末時点でアスベスト含有建材があると届け出た八十四の解体工事現場などで、建材が適切に処理されているか確認する。
『再生砕石問題 アスベスト混入46カ所』 2010年9月1日 朝刊
建設廃材を再利用した「再生砕石」に有害なアスベスト(石綿)含有建材のスレート材の破片などが混入している問題で、市民団体「浦和青年の家跡地利用を考える会」(さいたま市)は三十一日、埼玉県庁で記者会見し、各地で行った調査で新たに東京都北区や板橋区、同県蕨市、香川県さぬき市でもスレート片混入が確認されたと明らかにした。
同会による調査地点は約二十カ所増えて約百五十カ所となり、スレート片などのサンプルのうち、NPO法人東京労働安全衛生センターでアスベスト混入が確認されたのは六カ所増え、四十六カ所となった。
斎藤紀代美代表は、さいたま市で昨年八月に県施設跡地の再生砕石からスレート片が発見されたことに触れ「これ以外は県、市ともに混入事実を認めようとしない。飛散防止策が施されないまま(砕石施設場所で)工事などが行われている」と批判。同席したNPO中皮腫・じん肺・アスベストセンターの永倉冬史事務局長は「スレート片からは微量でもアスベストが飛散する可能性がある。まず実態調査が必要」とした。
同会は会見の前に、県に請願書を提出。実態調査や混入原因の究明、対策検討委員会の設置を求めた。